2021年4月6日に狛江市内の白ポストが撤去
最近は、白ポスト撤去のニュースばかりで恐縮だが、新たな情報が確認できたのでご報告したい。2021年4月6日に、東京都狛江市の白ポストが撤去されていたことが判明した。狛江市の青少年問題協議会小委員会会議資料より、引用させていただく。
令和2年度第4回狛江市青少年問題協議会小委員会会議資料[PDF]より
引用画像で撤去されているのは、狛江駅北口の白ポストであろう。狛江駅のものだけではなく、なんと一年近く前に、狛江市の白ポスト全七基全てが撤去されていたのだ!
以下、狛江市の白ポスト撤去までの道のりをまとめてみた。
白ポストのゴミ箱化問題
狛江市は白ポストに関する情報を市のホームページにきちんと掲載してくれている(記録を残していただけているのはありがたい)。白ポスト撤去に至るまでの経緯が確認できたので、青少年問題協議会小委員会の議事録から、当該箇所をご紹介していこう。
まずは2018(平成30)年11月21日の議事録から
(3)不健全図書等追放ポストの回収について
不健全図書等追放ポスト(白ポスト)の回収について事務局より説明を行う。
委員より、前回の回収では、電子媒体、特にビデオ類が多かった旨、ポストが半分ゴミ箱扱いされてしまっている旨の意見が出る。
ここで、白ポストが本来の機能である、不健全図書等の回収よりも、ゴミ箱扱いされてしまい、運用に支障が生じている旨が報告されている。
白ポスト撤去提案が出される
続いて2019(平成31)年2月21日の議事録から
(2)不健全図書等追放ポストの回収について
不健全図書等追放ポスト(白ポスト)の回収について、資料に基づき、事務局より説明を行う。また、平成31年度までは、狛江市後期基本計画に基づくため、設置しているが、不健全図書を取り扱うコンビニが減ってきていることや、書籍よりインターネット動画の需要が高まっていることから、平成32年度の基本計画改定に合わせ、ポストの撤去も検討できる旨を事務局より説明する。
委員より、回収を通じてポストがゴミ箱代わりに使用されていた気もしていたので撤去に賛成の旨、オリンピック前にはなくしたい旨の意見が出る。
ここで初めて撤去の提案が行われている。理由は以下の四点。
- 不健全図書を取り扱うコンビニエンスストアの減少
- 書籍よりもインターネット動画の需要が高まっている
- ポストがゴミ箱代わりに使用されている
- オリンピック開催前になくしたい
大手コンビニでの成人雑誌の取り扱いが2019年の8月で終了している。市場に不健全図書が出回らなくなれば、当然、白ポストの回収量も減る。具体的な白ポストによる回収量は開示されていないが、少なからぬ影響があったのであろう。
また「オリンピック開催前になくしたい」の指摘も注目すべき点だろう。オリンピックでは、世界中の人々が東京にやってくる(コロナ禍で結局来なかったけど)ため、いかがわしいものを外国人に見せたくない。という考え方から、風俗街での摘発が進んだりと「浄化」キャンペーンが展開されがちである。
東京オリンピックの開催が、狛江市の白ポストの存続に少なからぬ影響を与えていたようだ。
白ポストを一基だけ残す案もあった
さらに2019(令和元)年5月29日の議事録から
(5)不健全図書等追放ポスト(白ポスト)の回収について
(中略)
・ 来年度からのポストの廃止についての協議を行う。問題協議会にて出た、市役所内のポストのみを残すという意見に対し、市役所に捨てに来る人がいるのかという意見が出る。次回以降の会議でも、引き続き話し合うこととする。
一気に七基すべてを廃止するのではなく、狛江市役所前にある白ポストのみ残してはどうか?との折衷案、あるいは段階的廃止論が提案されている。
白ポストの廃止が確定する
そして、2019(令和元)年11月20日の議事録から
(4)不健全図書等追放ポスト(白ポスト)の回収について
(中略)
第1回小委員会でお話したとおり、来年度以降の不健全図書等追放ポストについては、廃止する予定。理由としては、ポスト自体を廃止している自治体が増えており、全国を見ても少なく、不健全図書自体のデジタル化やインターネットでの発信の増加、市のポスト維持管理のコスト等の点から市としては廃止させていただきたい旨、承認をいただく。
現在、令和2年度の予算要求を行っており、市内7箇所のポストを撤去するための費用を計上している。
この場で正式に白ポストの廃止が報告されている。新たな廃止理由として以下が挙げられている。
- ポスト自体を廃止している自治体が増えている
- 市のポスト維持管理のコスト
神奈川県小田原市の白ポストは2021(令和2)年度から順次撤去が行われている。タイミング的に微妙だが、隣県の自治体としてこの情報は共有されていた可能性がある。
また、市のポスト維持管理のコストも重要なファクターである。運用回収に当たられている方々の負担は大きかったのであろう。破損や劣化に伴うポスト本体の維持費用も相応に発生していたはずだ。
白ポスト撤去に向けたプロセス
この議事録で興味深いのは、白ポスト撤去に受けたプロセスが議論されている点にある。続けて、当該部分を引用させていただこう。
(委員)今年度最後の回収をした後にポストが残っていたらまたそこに入れられてしまうと思うが、いつ撤去するのか。撤去が遅くなるとそのリスクも高くなると思う。
(事務局)来年度の予算要求の議決が3月末になるため、4月から予算執行と
なる。予算がついたら早急に撤去する。撤去するまでの間に入れら
れてしまう可能性があることに関しては、口を塞いだり、撤去の際に中身を整理して処分したり等対応を考えていく。
(委員)最終の回収が終わったら塞いでしまった方が間違いなく入れられない
のではないか。(事務局)予算執行が4月からのため、撤去は令和2年度からとする。
(委員)回収日にガムテープみたいなものを貼ってはどうか。貼るだけだと誰が貼ったか分からない。剥がされてしまうかもしれない。「回収やめました」等の文言の貼り紙を貼るべきだと思う。
最終の回収から、本体撤去までの期間に不健全図書が投函されてしまうリスク。「回収をやめる」旨をきちんと掲出すべきでとの指摘が興味深い。
少なからぬ年数、狛江市の白ポストは運用されてきたわけで、定期的に利用していた市民も存在しただろう。いきなり撤去したり、運用を停止してはクレームにつながる可能性もある。白ポストを撤去するにも、それなりのお作法が必要であることが伺える。
撤去費用は15万円
最後に、2021(令和三)年6月18日の議事録から
ここでは、白ポストの撤去報告が行われている。
2 不健全図書等追放用ポストの撤去
市内7か所に設置している不健全図書等追放用ポストについて、昨今の不健全図書の状況が、紙媒体から電子媒体・携帯電話等へ移行していることや近隣自治体の実施状況等に鑑み令和2年4月6日に撤去いたしました。
(中略)
悪書追放ポスト撤去手数料 151,800円
令和3年度 狛江市青少年問題協議会議案書[PDF]より
注目すべきは決算報告にて、白ポストの撤去費用が明記されていることだろう。狛江市には大型の六角柱型白ポスト(駅配置タイプ)三基と、小型の三角柱型白ポスト(バス停配置タイプ)四基が配置されていた。これだけのものを撤去するのに15万円強で済んでいるのは、意外にリーズナブルに思える。廃棄された白ポストのその後は、鋳潰されて再生資源となるのだろうか。この点もちょっと気になるところである。
都内の白ポストは三鷹市のみに
以上、狛江市の白ポストについて、撤去に至るまでの流れを、市のホームページ掲出の資料を元にまとめてみた。狛江市の情報公開姿勢に感謝である。
これで、東京都内で稼働している白ポストは三鷹市の五基のみとなった。
先日の小田原市、寒川町、そして今回の狛江市と、首都圏近郊での白ポスト廃止の流れが加速している。三鷹市の白ポストも、この状況下では長くはもたないかもしれない。なくなる前に、もう一度撮影しにいかねば!と、決意を新たにするわたしなのであった。